The Art of Game Design
http://www.amazon.com/dp/0123694965/
という本が大変面白かったので紹介というか、読んでる時 twitter に書き散らしていたメモまとめ。
著者の Jesse Schell 氏は、サーカスでジャグラーパフォーマーコメディアン等を経験した後、IBM & Bell 研究所でソフトウェアエンジニアを努め、その後ディズニーでアトラクションやオンラインゲームのディレクションを努め、現在カーネギーメロン大学でゲームデザインの教授を努めつつ、Schell Games の CEO を務めているという波乱万丈な経歴の持ち主です。IGDA の議長でもあったのだとか。( http://artofgamedesign.com/bio/ )
ゲームデザイン自体は勿論、書籍にするにあたってどのように体系化しているか、あたりにも興味があって手にとってみたんですが、予想に反してアカデミック色は薄く、かなり現実に即した内容で色々圧倒されました。
この本は大学の教科書として使われていることもあるそうで、英語圏のゲーム業界には学生時代からこんな本で教育を受けた人が輩出されてるのかと考えて空恐ろしくなったほどです。
以下メモ。
The Art of Game Design、「ゲームデザイナに必要なことは、自信を持つこと (あるいはそのように見えること。チームメイトの士気に関わるので)、そして人の話を『深く』聞くこと」的な話から始まってびっくりした。完全にチームプレイヤーとしてのゲームデザイナに導く路線。
思うところあってボイスレコーダーを注文してみた。メモ帳とペン持ち歩く習慣は身につかなかったけど、ボイスレコーダー使う習慣なら身につくんじゃないかという希望。 The Art of Game Design で紹介されていた。
The Art of Game Design をのろのろと読み進めている…。現在 1/3 くらい。 ゲームとは何か、みたいな話から始まって、ゲームのメカニクスをどう組み立てるか、そもそも人間の脳は世界をどう認識しているかみたいな話がここまでの主な内容。雑学本としても面白い。
「ゲームとは何か」にかなりのページ数を割いてるのがすごく印象的。 「面白さの根源は何か?」「"驚き"」 「遊びとは何か?」「好奇心を満たすこと」 「ゲームとは何か?」「問題を解くこと」 紆余曲折経てこの本の中ではそんな感じで定義している。
ゲームとは何か、は幼少の頃の経験とかで結構変わってきそうだ。自分の場合ゲームは「予測すること」だと思う。人狼とか格ゲーとか対人ゲー好きな友人はよくゲームにおける「読み合い」の重要性を語ってたっけ…。
ゲームデザイン本で印象的だった一節「ゲームが『問題を解くこと』ならば、Warのような完全運任せのゲームはゲームではないのか?否、ゲームだ。Warをプレイする子供達は、運命を変えるという問題を解こうとしているのだ。それが不可能だと理解したとき、ゲームではなくただの活動となる」
The Art of Game Design、インターフェースに関する話の「モード切り替えは混乱の元なので最小限に留めよ」みたいなところで、悪い例として vi エディタが出てて吹いた。"vi was a symphony of confusing mode."
The Art of Game Design のろのろと 2/3 くらいまで読んだ。前 1/3 からここまで、インターフェース の話、Interest Curve の話、Indirect Control の話、Transmedia (マルチメディア展開) の話など。
細かい話だけどちょっと面白かったのが、パズルの定義。 ゲームとかで明らかに最適解 (格ゲーで明らかに一人強いキャラとか) がある場合、そういうのを "dominant strategy" と呼ぶらしい。そしてパズルとは dominant strategy を探す遊びだ、と。
すごく面白かったのがIndirect Controlで、ユーザーをそれと意識させずコントロールするテクニック。例えば喫茶店は昼飯時とかはペースの早い音楽を流して客の回転を早め、人がまばらな時間はその逆をやる。これは本当にうまく機能していて、こういう手法はゲームでも極めて有効だと。
集中線で画面中央に意識をフォーカスさせるとか、Mirror's Edge で赤いオブジェクトが進路を示すのとか、(この例はややあからさまだけど) そういうあれ。 章の最後で老子の言葉「優秀なリーダーの元で働く者は『自分の力でやり遂げた!』と思うものだ」的なのを引用して締めている。
ううむ、うまくまとめられない…。 Transmediaの話ではポケモンや Star Wars の成功について分析。マルチメディア展開について「作り手が提供したいのは世界だ。でも世界は売れない。だから世界への入り口となるゲーム、アニメ、グッズなどを売るのだ」この解釈は面白い。
The Art of Game Design、「動物は一緒にメシを食う相手の選択には非常に慎重だ。そして人間も例外ではない。」
The Art of Game Design、もうちょっとで読み終わる。最後の方は結構駆け足で、チームプレイの話とかプレイテストの話とか、クライアント(パブリッシャ)との付き合い方や売り込み方、利益とコストのこと等ビジネスの話にまで触れている。
著者はプレイテストが大っ嫌いだそうで、「膨大な労力を費やして作り上げた、自分の一部と言えるような作品を、何故批判の嵐に投げ込まなきゃならんのか。 でも良いゲームを作るには絶対に不可欠なプロセスだ」みたいな風に語っている。 ちょっとこう、国内との温度差を感じずにはいられない。
クライアントの話。「今まで人生で聞いた中で最も馬鹿げた提案がクライアントの口から飛び出してくることもある」 筆者の経験が滲み出てておもろい。 概ね「クライアントもゲームをより良くしようと提案してることが殆どで、yes/noで答えるのではなく、理由と目的を聞き出せ」みたいな話。
Animal Kingdomプロジェクトのプレゼンの逸話。Joe Rohdeがプレゼンを終えたとき、ディズニーCEOは乗り気ではなかった。「動物の面白さがわからない」Joeは一度その場を離れ、すぐ戻ってきた。ベンガル虎を連れて。「これが動物の面白さです」 プロジェクトは認可された
The Art of Game Design、読み終えた。 最後はゲームが人に与える影響の話。ゲームは経験であり、経験は何かしら人を変える。ゲームデザイナはその義務を負う必要がある。というような。教育目的ゲームや暴力ゲームの批判の話などにも触れている。
「学生は課題を与えられ、期限内にそれをこなし、評価を得る。難度をあげつつこれを繰り返し、最終試験を経て卒業する。このプロセスはゲームそのものだ。教育とゲームの差は何か?教育には驚きが足りない。感情移入も足りない。コミュニティも足りない。Interest Curve も良くない」
この本の著者はパフォーマーだったそうで、その頃得た経験がゲームデザインでも役立っていると所々で語っている。一方で、デジタルゲームならではのアプローチ (自動生成ネタとか) の類には否定的。現実的な内容に仕上がってるなと思う一方、技術者としてはちょっと寂しい部分もなくもなかった。